@yuichirominato 2019.01.07更新 467views

【金融】金融企業はどのように量子コンピュータに向かい合えば良いか

量子アニーリング 量子ゲート 量子コンピュータ 金融

はじめに

実は、金融計算ほど量子コンピュータの性能を限界まで引き出せる業界もありません。そういった意味で、金融計算と量子コンピュータの関係を見ていれば、今後どの分野に量子コンピュータが活用できるのかを判断できます。ただ、金融計算における量子コンピュータは同時に最高難易度になりますので、それなりに苦労することになります。苦労しないで金融計算への応用は厳しそうなので、せめてどのように向かい合えば良いかを確認します。

まずは資産運用(量子アニーリング)

2015年末にGoogleとNASAが共同で量子アニーラが一億倍高速という発表をしました。それと同時にbloombergにウォール街が量子コンピュータを活用という記事も出ました。

ウォール街を魅了するキュービットの世界-数秒で最適な投資先判明か

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2015-12-11/NZ5C0J6VDKHU01

GS、RBSやCMEなど各社投資会社などが量子アニーラの活用を検討しているというものでした。

実際ゴールドマンサックスはD-Waveに参加しており、CMEは1Qbitに参加しており、D.E.ShawはQCWareに参加しています。

当時の状況からいうと量子アニーラを利用したグラフ問題の活用で、各社アニーラを活用していた時代に資産運用問題特にポートフォリオ最適化問題において量子アニーラの活用を目指していました。

しかしそれも3年前の話であるのでこれらは過去の話になりつつあります。

モンテカルロ計算(量子アニーリング)

もっとも需要があるのはモンテカルロ計算やリスク計算かと思います。各社莫大なお金をかけて日々シミュレーションをしていますので、すこしでもそのコストが下がればと思います。GSも2017年のQ2Bカンファレンスでモンテカルロに言及していました。実際にはなかなか理論的な壁がありモンテカルロを代替するところまでは進んでいません。

https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/column/15/061500148/121100147/

デリバティブ(量子ゲート)

実質的にモンテカルロ計算ですが、量子ゲートで位相推定アルゴリズムを活用してモンテカルロのサンプリング回数を減らすという論文が出ています。

https://arxiv.org/abs/1805.00109

XANADUはフォトニクス量子コンピュータを活用して各種量子計算を行う会社で、テクニカルアドバイザーに有名な人が付いていますが、正直この量子ファイナンスの手法は理論がちょっと古いと思いますし、実際のマシンではこの理論は動きそうにないので、理論的な提案にとどまるのではないかと思います。

ただ、ここで大事なのは汎用性の量子マシンを活用した金融計算という視点で、実際量子アニーラにはない量子ゲートの量子計算が金融とどのように関わるのかという大事な視点があります。

金融計算と量子コンピュータの弱点

量子アニーリングマシンはカナダのD-Wave社が提供してるマシンで、量子アニーリングと呼ばれる理論が元になっています。この量子アニーリングは実質的に古典計算でできることを量子効果を活用して補助しています。

ここからできることは主に組合せ最適化問題で、金融の問題をイジングモデルもしくはQUBOと呼ばれる形式に直し、計算をする必要があります。

ただ、量子アニーリングが本当に今のマシンよりも早いのかがよくわかっていません。また、量子アニーリングは量子ビット数同士の接続に制限があるのですが、大概の金融計算はこの量子コンピュータの弱点である接続数が大事になる計算がほとんどです。例えばポートフォリオ最適化計算では、銘柄同士を全て接続する必要があります。為替では通貨ごとを接続する必要があります。

実は金融計算では量子アニーリングや量子ゲートのマシンの弱点をついてしまうため実質的に活用するのが最高難易度になってしまいます。逆に金融計算で量子コンピュータを活用できればそれはとんでもないことです。

量子アニーラと素因数分解

実は量子アニーリングマシンは暗号解読のかなめの素因数分解の問題において量子アニーリングのもう1つの弱点をついてきます。それが多体問題です。素因数分解問題を解く際に必要な数式で度々3つの量子ビット以上の掛け算が出てきます。それらの掛け算は今のマシンでは計算ができませんので、2量子ビット同士の計算に分解する必要がありますが、この分解過程において大きなロスが発生します。そのため、やはり素因数分解を量子アニーラで解くということはもっとも難易度が上がります。

量子ゲートマシン

次に量子ゲートマシンです。量子ゲートマシンは、量子アニーリングに比べて計算範囲が広いです。というか、そもそも量子アニーリングはアルゴリズムであって、量子アニーラはそのアルゴリズムを搭載した専用マシンであるので、比較が間違っている気もしますが、、、

量子ゲートマシンは各種のプログラミングを通じて現在のコンピュータで計算できることを計算できる汎用性を持ちながら、今のコンピュータで計算できない位相計算やもつれ、重ね合わせなどを活用しながら高速性を実現しようというマシンです。

量子ゲートにおける金融計算を少し見てみたいと思います。

量子ゲートにおける資産運用

量子ゲートマシンでは量子アニーリングのような計算ができます。QAOAや量子断熱計算で、原理的には同じようにイジングモデルと呼ばれるモデルに問題を落としこみ、シミュレーションをかけます。量子計算ができますので、量子アニーリングなどの量子計算を量子コンピュータ上で再現してシミュレートできます。

https://qiita.com/ymurata/items/e01ddc953f6d27628c64

実際には、接続数がまず量子アニーリングよりも厳しいです。例えば、Google社のマシンでは、foxtailやbristleconeなどのマシンがありますが、2量子ビット接続を使えるCXを実行できる隣接量子ビットのトポロジーがかなり限定されているため、金融計算のような全結合がよく出るような問題はなかなか実装が大変です。また、シミュレーションも量子アニーラのように量子マシンだけでの実行ではなく、量子古典ハイブリッド計算と呼ばれるハイブリッド式での実行ですので、実質的にもう少し時間がかかります。まだまだこれからの研究開発に依存するでしょう。

位相推定

多くの昔の量子計算ではこの位相推定アルゴリズムがでてきます。位相推定はオラクルと呼ばれるブラックボックスな関数を表現したゲート回路を活用して、素因数分解などを実行できるアルゴリズムです。

現在の暗号の基礎となっているような理論を量子コンピュータでとこうというのはだいたいこれがベースになっています。

しかし、実際最近のマシンではこれを実行するのは実質的にまだ先になりそうです。暗号解読用の回路を実装して実行するのは現在のマシンではまだまだ難しそうですが、なぜそれが難しそうなのか、そして実際にどのようにすればいいのかは、やはり一度位相推定をきちんと解く必要があるため、理論を理解するのはとても大事かと思います。

shorのアルゴリズムはやはり最高難易度なので苦労しそうです。。。

結局どうすればいいのか

ここまでみてきて金融における量子コンピュータの活用ではあまりいい面は見えませんでしたが、実際にはどのように向かい合えば良いのでしょうか。

1、セキュリティ
2、リスク計算

金融におけるテーマであるセキュリティは2019年に盛り上がりを見せると思います。実質的に位相推定は2018年のマシンでは解くことができませんが、つい数年前まで実現不可とまで言われていたマシンが急激に開発が進んでいることを考えるとあながちできないとも言い切れないのが怖いところです。そのため世界中で急ピッチでセキュリティ対策がとられており、2018年ごろから少しずつソリューションが提供され始めてきました。2019年も引き続きこの傾向は続きそうなのでセキュリティ対策は考えてもいい分野ではないでしょうか。仮想通貨やインターネットそのものに対して不安を持っている方々も増えているので提供できるセキュリティ対策は需要があります。

そしてリスク計算です。これまでの量子アニーラを活用したモデルは主にアクティブな運用をする資産運用がメインでした。利益を出さなくてもリスクを取りたくないという需要はあると思いますが、リスクを減らすという視点はこれまでの量子マシンにありませんでした。XANADUのQuantum Financeの論文では、デリバティブ計算でリスクを軽減できますので、計算手法は少し古いですが、それを現在の最新の量子計算に置き換えて評価はできそうです。

ロッキードマーチン社の機械学習論文でもある通り、量子アニーラなどを活用した画像認識で曖昧な計算が有利ということもあり、従来計算機では難しいような判断をできる可能性もまだあります。

https://arxiv.org/abs/1510.06356

予想や分析という観点で機械学習と組み合わせたモデルなども活用できるのではないでしょうか。

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